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2010年9月

いつまでもあると思うな、でもいつまでもあって欲しい

師匠圓橘は、弟子をとる前、両親を連れて来なさいと言う。

親から上納金を毟り取るのではなく、

本人は良くても、親が許さないのであれば

自分のせいで親不孝をさせることになるから

両親が了解しないと弟子にはしない、という方針、らしい。

2004年10月。両親を静岡の片田舎から

無理やり引っ張り出して師匠の前に連れて行った。

「行ってはやるが俺は首を縦には振らない」

父はそう言い放っていた。

師匠宅で師匠、おかみさん、兄弟子になるであろう二人が居並ぶ中、

緊張の面持ちで座る渡辺家。

「お宅の息子さんが噺家になりたいそうなんですが・・・」

師匠が切り出す。どう出る親。

「私は別にこいつが何をしようと構いません。知ったこっちゃありません」

父の暴言。あれ、行く前と様子が違う。首どうなってんだ。

「まさかうちの子が噺家“なんか”になろうと思うなんて」

母の失言。おい、目の前に噺家三人いるんだぞ。

「お母さん、私も噺家なんですが・・・(◞‸◟)」

師匠苦笑い。

なんだかんだですんなり許された。

ここへ至るまでがすんなりどころかげんなりだったけど。

半泣きでお礼申し上げる私を尻目に談笑する師匠と親。

「一応こいつも長男なんで、すいませんが

嫁の世話はして欲しいんですが」

何言ってんだこの親父・・・!!結婚相談所じゃねえよここ。

「わかりました!それは心に留めておきます!」胸を叩く師匠。

何で師匠もそれを了承するの?!

母親はおかみさんに深川の名所を教えてもらってる。

遊びで来てんじゃねえんだよぉ!なんなんだよこの両親はよぉ!

師匠がおもむろに口を開く。

「彼の名前なんですが・・・」

来た!名前を貰える!期待に胸が膨らむ。

僥倖・・・!圧倒的僥倖ッ・・・!

「橘に音と書いて、橘音(きつね)にしようかと思います」

しばしの静寂の後、父が

「あの・・・それで決まりですか?」

明らかに不服そうな父。まさかのダメだし。

血の気が引く。もう駄目だ、弟子入り却下だ・・・!

「あ・・いや、決まりではないです。えー。考え直してみます」

えええええええええええええええ!!!

そっちを却下?!!いいじゃんきつね!覚えやすいじゃん!

頭の中がぐしゃぐしゃになったまま師宅を後にした。

その後兄弟子の案内で浅草へ行き、着物など

当座の必需品を購入してからこの日は帰省した。

 

あれから6年近く経った。

餓死する事もなく、何とかこの商売を続けて来られたのも

師匠・おかみさん・兄弟子・弟弟子、そしてお客様のおかげ。

生かされている、とつくづく思う。

地元沼津での仕事もちょこちょこやらせてもらってる。

親戚の紹介によるものが殆ど。

でも自分の会ではない。

地元での勉強の場が欲しいと前から思ってはいた。

そこへ地元関係者より沼津での落語会開催の要望。

願ったり叶ったりだ。やらない手は無い。

そこへ条件がついた。師匠を呼んで欲しい。

やはりそうきたか・・・。だと思った。

弟子の分際で師匠を地元に呼ぶなんて恐れ多いし、

いつ不機嫌になるかわかんないからなあ。

時限爆弾抱えて歩くようなもんだからなあ。どうしよう。

地元の人間が急かすので、恐る恐る師匠に打診してみた。

二つ返事で了承された。

 

9月12日。雨男の僕にしては珍しい晴天。

於・サンウェル沼津。

三遊亭圓橘・橘也の師弟落語会開催。

行きの新幹線で師匠のためにグリーン車の切符取ったら

同じ車両に林家木久扇師匠がいらっしゃるという

ハプニングを乗り越えて沼津に到着する一行。

あれはびっくりした。

まだ出来たばかりのホールなのでとても綺麗。

でも初めての会場なので念入りに準備。

開場。おかげさまでチケットは完売。むしろ足りなくて

お断りしたお客様もいらしたとか。本当に申し訳ございません。

ちょっと外へ出たら高校の時の学年主任の先生に遭遇。

いやあ恥ずかしい><

先生もあんな引っ込み思案な勉強馬鹿がこんな商売してるのを

不思議に思ってるんだろうなあ。

 

頭が真っ白になったまま開演。

開口一番は好吉で『浮世床』

しっかり高座勤めてくれた。安心して上がれた。

僕の一席目は『元犬』。最近方々でやらせて頂いてる。

兼好兄さんに感謝しなきゃ。また何か稽古つけてもらおう。

お後は師匠。ネタは『雁風呂』

僕が師匠目当てで両国寄席行った時に師匠がやってた噺。

圓生百席で聴いて知ってはいたけど、

まさかこれが聴けるとは思わなかったっけ。

あれを聴いて即座に手紙を出し、そこから始まったストーカー行為。

思えば気持ち悪い長文の手紙を出したもんだ。

入門して初めて上がった日、寄席の主任は師匠だった。

その時も『雁風呂』やってたっけ。

そんな思い出の噺を師匠がみっちり。

噺の舞台が静岡なので、それでチョイスしたらしい。

師匠が高座に現れた時の拍手が何より嬉しかった。

 

仲入り挟んでもう一席僕。師匠に教わった『蒟蒻問答』

前日まで風邪で二日くらい寝込んでたんだけど、

寝ながらずっと稽古の時に録音したやつを聴いてた。

どうにも難しい。当たり前なんだけど上手く出来ない。

今の自分にはあれが精一杯です。まだまだひよっこです。

お客様のおかげで乗り切ったようなもんです。

どうにかこうにか終演。

 

身内だけで打ち上げ。師匠も同席してくれた。

よかった・・。疲れて帰っちゃうかと思った。

地元の魚を食べて欲しかったのよね。それくらいしかないので。

打ち上げの席で両親と談笑する師匠。

気になって仕方が無い。何しろ前科がある両親だ。

また舌禍事件でも起こされたらどうしよう。

隣りのテーブルからずっと耳を傾ける。

「ところであいつ、コレ(小指を立てる仕草)の方はどうなんですか」

また親父か!!だからそれはいいっつってんだろ!

「うーん・・・オカマじゃないとは思うんですが」

師匠何言ってんの?!!真面目に悩まなくていいです!

仮に居たとしても言わないよ師匠に!

「師匠、彼女が出来ません、出会いが欲しいです!」

とか弟子が言うわけないじゃんか。ぶっ飛ばされるよ。

結婚ってなったら報告はするけど

今は正真正銘だーれも居ないし。正直者ですよ僕は。

サービス精神旺盛な師匠が余興で都々逸を披露してくれる事に。

タイミングを見計らう師匠。タイミングって大事なんだよ。

そういう機微をわからない田舎者の親父が

「まだ始めないんですか?」

さっさとやれ、みたいな口調。

もう黙ってろ!口閉じてろ!!御前であるぞ!!!

「お父さんはシャレがきついから」

苦笑いする師匠。あの時の反省を生かさない親。

 

時限爆弾は爆発せずに済んだ。多分。

これをきっかけに、今後も精進しないとなあ。

両親はどうやら今の状況を楽しんでるようだ。

気苦労も耐えないんだろうけど、こんな奴を産んでしまった

身の因果と諦めてください。

あとはもう一組の両親。

師匠とおかみさんに親不孝しないよう、頑張ります。

まだまだどうしようもないクソ弟子ですが。

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第二回WWW

また更新さぼってしまった。

どうにも疲れが取れないというか

ここ最近どうにも体調不良なのでつい。

 

9月7日。於上野広小路亭。

第二回WWW興行開催。

プロレスを愛する芸人が寄り合っての楽しい会。

マグナム小林総統の号令の下、今年も集結する有象無象。

去年に引き続き、ゲストが大物。

東洋の神秘、ザ・グレート・カブキ、推参。

お客様以上にそれを喜ぶ楽屋一同。

緊張感が楽屋を支配、はしない中いそいそと準備。

 

全選手入場式のあと、第1試合(開口一番)が僕。

入場式では男どもはラッシャー木村さんの格好で登場。

つまり半裸。タイツに髭にマイク。

高座は着物。

慌てた慌てた。

カブキさんが横にいらっしゃる楽屋で

汗まみれになりながら着替え。

意外とすぐ着られるもんだね。

橋本真也さんの入場テーマ、『爆勝宣言』に乗って高座へ。

プロレスに因んだ噺を、ということだったので

古典を改作したものをやってみた。初めての経験。

新作を一から作るのはちょっと時間的にも技術的にも

苦しかったので、改作でご勘弁頂いた。

やってみて思う古典の凄さ。

やっぱどっかに歪みが生じるんだね。

またどこかでやる・・・ことは多分無い。

 

第2試合は大喜利。こちらも円楽党チームとして参加。

服装はTシャツにジャージ。また着替えか!

カブキさんが横に居る楽屋で着物を脱ぎ捨て高座に。

芸術協会チームとの対抗戦。

マグナム兄さんの期待には添えなかったかなあ。

もっと上手く出来たはずですよね。申し訳ございません。

でも大喜利は楽しいので、また来年やれたらいいなあ。

お後はらく里兄さんが高座へ。モニター越しに聞こえる爆笑。

さすが兄さんは上手いなあ。去年の高座も面白かったっけ。

 

仲入り挟んでいよいよカブキさんのトーク。

日プロから始まって、各団体を、世界を舞台に

生き抜いてきたカブキさん。時代の生き証人。

語られるエピソードはどれも面白い。

往年の名選手からカブキさんの入門までの経緯まで

色々聞けた。舞台袖で正座して聞いてしまった。

もっと聞きたい、俺まだ聞いてない、という方は

是非飯田橋にあるカブキさんのお店へどうぞ。

 

一凛姉さんの講釈、今年はラッシャー木村さんの追悼ということで

ラッシャーさん一代記。

去年の三沢さんの講釈もよかったなあ。

一凛姉さんの高座があるおかげで、この会に一本芯ができる。

これは落語には出来ない。講釈ならでは。

そして主任はマグナム小林総統。

去年はサポートに徹してたので、今年は満を持してネタ披露。

バイオリンで昭和の名レスラーのテーマ曲を演奏。

個人的には馬場さんと鶴田さんのテーマ曲は

バイオリンに合う気がしたんだけど、兄さん曰く

全日系の曲は凝ってて大変らしい。

今回のテーマである昭和のプロレスを懐かしんだところでお開き。

 

おかげさまで今年も大勢お運び頂きました。

この場を借りて御礼申し上げます。

また来年も、その次の年もずっと続けていきたい会なので、

今後とも宜しくお願い致します。

混乱に乗じて撮った写真も載せとこう。

カブキさんは何より優しい方。人柄が素敵。

馬場さん哲学、レスラーである前に社会人たれ、っていう

教訓を体現してる人だと思う。

Photo

それにしても拳の大きさが違いすぎる・・・!

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年に一度の

9月7日、晴れ。
年に一度の会が今年も
やって参りました。
第二回WWW興行です。

去年、三沢光晴さんの追悼を
僕らなりに、と始めたこの会。
今年は落語家・講釈師が語る
昭和のプロレス、がテーマ。

私は開口一番の高座と、
その後の団体対抗大喜利を
勤めさせて頂きます。

だらしない若手芸人の体、
普段やらないプロレスに因んだ高座、
ゲストのザ・グレート・カブキさんの
勇姿をご覧になりたい方は
本日上野広小路亭に
是非ご来場くださいませ。

うちの師匠には見せられないので
内緒にしといてください。

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六代目のご命日

携帯から更新してみよう。
レイアウトが汚くなるけど。
こっちに慣れたら更新頻度
上がるかもしれないし。

9月3日、快晴。
六代目円生師匠のご命日。
落語って凄い、と
初めて教えられた円生師の高座。
円生師聴かなかったら
この商売選ばなかったかも
しれないわけで。
ご恩返しはお墓の掃除
くらいしかできないわけで。
前座の頃からこの日は必ず
朝早くに掃除に行く。

毎年この日は快晴。
晴れ男だったのかしら。
汗でグショグショになる。
円生師は汗っかきが
嫌いだったらしいから
さぞかしお怒りなんだろうなあ。
申し訳ございません。
お寺の周りにはお店とか
ないから、前座の頃は
きつつき兄さんに飲み物を
多めに買って貰ってたっけ。
そのコンビニも無くなってた。

9時半にお寺へ。
先代の円楽師が健在の頃は
一門が集まる数少ない機会
だったんだけど、
今年は誰にも会わず。
思いがけず円生師独占。
今アメリカ公演中の
うちの師匠の無事を
祈ったりしてみた。

しかし寂しい。
こういう日くらい
みんなで集まるとか
したらいいのに。
考え方が古いのかね。
家族意識みたいなもんは
二の次なのかね。
自分は古くてもいいです。
あんまり寂しかったんで
たて前座の鳳笑に電話したら
「1日に鳳楽一門は行きました」
あ、そう。
他の皆さんもそれぞれで
行かれたようで。

はっ!
まさか!
僕だけ仲間外れ?村八分?
そういう古い考え方よくないぞ!

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